ラスベガス


ミスター;
 おや、カウンターの奥の方の席には、麻雀プロの馬場ゆういちさんがいらっしゃって、先ほどからラスベガスのギャンブルのお話をしておられますよ。ちょっと盗み聞きしちゃいましょうかね。


聞き役男;
ブラックジャックもなさるんでしょう?

馬場;
ブラックジャックが好きなんです。バカラは全然駄目。丁半博打みたいで駄目なんです。

聞き役男;
バカラって、だって相手にも賭けられるなんてちょっと概念が変ですよね。

馬場;
要するに、簡単に言えば丁か半かですから。そういうの嫌いなんです。丁か半かっていうのは。

聞き役男;
ブラックジャックってある程度麻雀に似ている?

馬場;
もう、凄く似た所があるんです。あの、今、麻雀で「亜空間殺法」っていう戦術が流行ってるんですよ。安藤プロと作ったんですけど。これ簡単に言うとね、ある程度流れが出来ちゃったら勝つ人は絶対勝から、ツモもいいし。(その)いいツモを食い取っちゃおう、っていうんで、ワザとひどい手から変な手、例えば一、二、三って持ってても四が来たらすぐチーしちゃうとかね。

聞き役男;
あー、ツモの流れとか。

馬場;
流れを変えちゃう。

聞き役男;
そう言えばいいのに、何で「亜空間」なんて言うの?

馬場;
そう言うと受けるかなーって思ったら、本当に受けちゃったんですけど。でね、ブラックジャックって言うのは「亜空間」を使える訳ですよ。

聞き役男;
えっ、当然取っちゃいけない、「もう一枚」って言っちゃいけない時にもう一枚もらっちゃうと?

馬場;
或いはね、7人、7ボックスあるじゃないですか。どの位置も重要なんだけど、例えば、親が凄くいい目が出ている、ついている状況の時は誰もヒットしない。自分が10でも11でもヒットしない。ワザと(親に)他の奴の目を引かせる。

聞き役男;
面白い

馬場;
或いは、親がついてきたら、ラストボックスの人が、これはラストボックスの人が一番責任あるんですけど、ワザとその人がヒットするとかね。18なんですよ。ヒットしてもしょうがない。18だったら、普通、ステイなんですけど、ヒットするとかね。

聞き役男;
ステイというのは「もらわない」。ヒットというのは「もう1枚もらう」ということですね。

馬場;
21を過ぎたらアウトのゲームですから、18だと普通もうステイなんですよね。

聞き役男;
絶対そうですよね。3以上来ちゃったら終わりですからね。でも、もらっちゃうんだ。

馬場;
ワザと引くんです。どんな手でもいいですから。自分がとんでもいい。その代わり、皆を勝たせるとかね。

聞き役男;
でも、それじゃあマカオでもラスベガスでも、ブラックジャックの最後のボックス?7つあるじゃないですか、一番最後に座る人って…

馬場;
大事なんです。大事なんです。

聞き役男;
「誰が座るんだあそこ」って。見てるわけ?

馬場;
いや、そこまでは無いんですけど、ただね、

そういった連携プレーがあるんですよ。暗黙のうちに国を越えて、国境を越えてあるの

有るのに、変な日本人が入って来ると怒るわけ。だから、

「お前、ここで引くなよ。皆ステイしてるじゃないか!何でヒットするんだ!流れを今変えようとしているのに。」

って感じで。

聞き役男;
それはもう、変なことやると皆から見られちゃう?

馬場;
見られちゃう。日本人はその辺解らないからニコニコしてるんだけど、皆、指さしてるわけ。「ブーー」ってブーイングしてるんだけど。

聞き役男;
何でブーイングしてるんだろう?って。

馬場;
分かんないから笑っとこう、という人が多いから。

聞き役男;
あー、それは麻雀してるとすぐ分かります?意味が。

馬場;
分かります。やっぱり流れの勝負だから。こっちの流れにしたかったら、向こうの流れ悪くするしかない。相対的な物ですからね。流れはね。

聞き役男;
はー、ブラックジャックって何度かやったことあるけど流れなんて考えたことないですよ。

馬場;
あれは、流れなんですよ。あれは、子が連合軍を組んで親をつぶさないといけないんです。

聞き役男;
そう言えば、親がやたら調子いいとか、親がよく破産する時とかありますよね。

馬場;
親に勝つ、っていうのはね、「目」で勝っちゃ駄目なんですよ。だから、自分が20で向こう21と、そういう勝負しちゃいけないんです。親を飛ばす事を考えなくっちゃ。バースト勝負で行かないと。向こうが飛んでくれれば、こっちは9でも8でも勝てるんですもん。向こうを飛ばせる流れにする様に子が連合軍を組まないと駄目なんですよ。

聞き役男;
それは暗黙の了解でマカオでもラスベガスでもそれなりの手練れ者達が座ったら、お互いに出来る分け?友情が。

馬場;
友情ができるんです。勝った瞬間握手し合いますからね

聞き役男;
はははは。やってみたい。恰好いい。

馬場;
だから、そういう感じでやりませんでした?ラスベガスそうじゃなかったですか?

聞き役男;
僕、今ドキッとしたのは、僕、変な日本人でした。はははは。もしかしたら、指さされていたかもしれない。

馬場;
マイペース型だったんですね。

聞き役男;
周り見てなかったかもしれない。

馬場;
皆で親が飛びそうな流れの時は、親が札をめくるじゃないですか、その時皆で「ボーッ」て言うわけ。

聞き役男;
恰好いい

馬場;
パキスタンの人とかね、香港の人とか、中国の人とか、いっぱいいるじゃないですか。皆で抱き合う瞬間はなかなか…

聞き役男;
博打打ちに共通の感覚なんですね。

馬場;
ああ、あるある。だから何て言うんだろ?あれ、不思議な友達関係って言うか、友達じゃないな。瞬間だけど、本当、心が通いあったり、そんな感じしますよね。

聞き役男;
ブラックジャックのカタルシスってそういう所にあるんだ。

馬場;
あ、もうそれだけです。うん。


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