パニーニ


ミスター;
パニーニ、パニーニ、うーん、パニーニね。一体どんな食べ物なんでしょうなあ。いや、失礼。うちの大学のゼミ生達に聞いたんですがね、ティラミスやナタデココみたいにパニーニって食べ物が巷で流行りつつあるんですが、しかし、それがどんな物で何処に行けば食べられるのかは、私にはさっぱり。

通りがかりの女の子A;
あそこのパニーニ超おいしかったよねー。

通りがかりの女の子B;
やっぱりお昼はパニーニだよねー。

ミスター;
パニーニ?ここでも話題に。うーん気になりますなー。どうしても知りたい。道行く女性にいきなり尋ねるのは気が引けるんですが、やっぱり止めときましょうかね。でも、えーい、聞いてしまえ!あのー。

通りがかりの女の子A;
何ですか?

ミスター;
いきなりすいませんが、パニーニのこと教えて欲しい…

通りがかりの女の子A;
あっ、ごめんなさい。私、分かりません。さようなら。

通りがかりの女の子B;
さようなら。

ミスター;
ちょっと待って!

通りがかりの女の子A;
やだー。

通りがかりの女の子B;
怖い。

ミスター;
ああー、私はただ、パニーニのことを聞こうとしただけなのに、怖いだなんてそんな…。気を取り直して、まいりましょうか。
東京は元麻布、仙台坂を上った辺りのイタリアンレストラン・アバンティー、我々が行くのはそこのウェイティング・バーなんです。
さあ、もう着きましたよ。私が扉をお開けしましょう。

ジェイク;
いらっしゃいませ。

えつこさん;
いらっしゃいませ。

ミスター;
いやー、えつこさんの声を聞いてほっとしましたよ。

えつこさん;
どうかなさったんですか?

ミスター;
いや、いや、今そこで若い女性に非道いことを言われましてね。いや、いいんです。ジェイク、いつもの!

ジェイク;
かしこまりました。


ジェイク;
お待たせいたしました。

ミスター;
いや、ありがとう。ねージェイク、今、流行りつつあるらしいんだけど、パニーニって知ってますか?

ジェイク;
ええ、知ってますよ。

ミスター;
おー、知っている?それってどんな物?

ジェイク;
うーん、一言で言うとイタリアの…

客;
ジェイクさん、ジンライムお願いします。

ジェイク;
はい。かしこまりました。ちょっと失礼します。

ミスター;
ああ、もう。

えつこさん;
どうかなさったんですか?

ミスター;
あれ?、えつこさん、もう私服に着替えてるんですね。

えつこさん;
ええ、私、今お仕事上がったところなんです。これから渋谷か新宿に一人でぶらぶら買い物にでも行こうと思って。

ミスター;
そうでしたか。

えつこさん;
今、何かお困りみたいでしたけど。

ミスター;
それがね、うちの大学のゼミ生達が今、パニーニっていう物が流行りつつあるって言うんですよ。でもそれがどんな物なのかまでは教えてくれなかったものですからね。

えつこさん;
はあ。

ミスター;
あんまり気になるものだから、さっきジェイクにパニーニの事を聞いたんですよ。ジェイクの話ではどうやらイタリアの何からしいんですがね。

えつこさん;
イタリアの…

ミスター;
ああ、そうだ。えつこさんなら若いし、流行に敏感ですよね。

えつこさん;
え?ええまあ。

ミスター;
当然、パニーニって知ってるでしょう?

えつこさん;
えっ。そ、そうですね。

ミスター;
いつも良く買ったりするんでしょう?

えつこさん;
まっ、買うかな。はは。

ミスター;
やっぱり。流石、えつこさんだ。こんなことを頼むのも悪いんですがね。買い物に行くついでにパニーニを買って来てもらえませんかね?

えつこさん;
へっ?

ミスター;
お願いしますよ。

えつこさん;
ああ、はい。いいですよ。行って来ます。

ミスター;
行ってらっしゃい。ああ、良かった。それにしてもえつこさん、いつもの元気がありませんでしたね。どうかしたんでしょうかなー。

おやおや、これはまた何という偶然でしょう。カウンターの一番奥の席で女性のお客さんが常連さんとパニーニのお話をしておられますよ。このアバンティーではあまりお見かけしないお方ですが、あの方のお話に聞き耳を立てていればどうやらパニーニの正体が掴めそうですなあ。


聞き役男;
細田さんは、僕も、うかがわせてもらったことがあるんですけど、代官山でワッフルズビューラー?ワッフルとパニーニの。

細田;
そうですね。まあ、両方、力入れて頑張ってます。

聞き役男;
それって、日本には何万件、何十万件てお店がありますけど、パニーニ専門店て言えるのは今、日本でワッフルズビューラーだけじゃないんですか?

細田;
そうですか?なんかそう言われると、結構早いですよね。

聞き役男;
めちゃくちゃ早いですよね。でも、パニーニってまず定義と言うか、こういう物がパニーニだって、何をパニーニと言うんでしょう?

細田;
良く聞かれるんですけど、イタリアではサンドイッチの事をパニーニて言うんですよ。サンドイッチとは言わないんですよね。

聞き役男;
それは、じゃあ、イタリアの喫茶店みたいな所に入るとツナパニーニ、野菜パニーニ、ミックスパニーニみたいなのがあるわけ?

細田;
イタリアではバールってカフェの様な割と皆、サッて寄ってエスプレッソとかカプチーノをサッて飲めて、朝からパンを食べて、仕事に行くとか、そういうカフェ文化みたいなのが日本より全然進んでるじゃないですか。欧米って。

聞き役男;
特にヨーロッパではね。

細田;
ロンドンではパブみたいな割と生活に密着してる。そういう所に入ると必ず、サンドイッチが並んでいるわけですよ。その場で作るっていうよりも、もう並んでるの。それで、何種類もあるんですよね。ハムとかが多いんですよね。モッツアレラチーズとか、トマトとか、あと茄子を焼いてオリーブオイルをかけた物とか。だから、ツナとか卵とか、そういうのは見ないですね。

聞き役男;
あのー、ワッフルズビューラーさんで出されているパニーニってパンがご自分の所で焼かれているってうかがいましたけど、とっても特殊な丸い形をした変わったパンじゃないですか。あれ何て言うんですか?

細田;
うちで使ってるのは、フォッカッチャっていうパンの作り方を基本に作っているんですよ。

聞き役男;
フォッカッチャっていうのは楕円形の少し大きめの。

細田;
フォッカッチャってね、味を想像するなら、ピザの生地をすごく厚くした様な物?

聞き役男;
それは正式な物と言うか、それが一番イタリアに行ってもバールでもよく見る物なんですか?

細田;
見ますね。割と見ます。あと、アメリカなんかでサンフランシスコとかニューヨークとかでもフォッカッチャを切った物に挟んだりとか。

聞き役男;
アメリカでも流行ってるんですか?

細田;
うん、はやり。サンフランシスコとかでは、結構、流行っているって言うか、何処へ行ってもと言うより、割とおしゃれな所で食べられるのかな?結局、イタリアでは、すごい日常的な物だけれども、それがほら、外に出ると、割と舶来になっちゃうものだから。

聞き役男;
イタリアの物だっていって。

細田;
そう、アメリカ人が作ったり、私みたいな日本人が作ると、やはり、外国の物だから、多少、本場の物よりイメージアップしてますよね。

聞き役男;
イタリー以外で最初に火がついたのはサンフランシスコなんですか?

細田;
私が思うには、2、3年前にパリでパニーニが流行ってるっていうのを聞いた事があるんです。記事でも見たし。

聞き役男;
へー、あーそうなんだ。

細田;
その時から、サウンド的に覚えやすい名前だし、インプットされてたのね、頭の中に。だけど、それをこの先やってみようとはその時は全然思わなかったんですよね。だけど、ここ1、2年、1年位かなサンフランシスコ行ったり、ニューヨーク行ったり、食べ歩いたりしてて。

聞き役男;
サンフランシスコでもニューヨークでもパニーニを見るようになったという。

細田;
そうなんですよ。まずは、エスプレッソとか、カフェラテとか、イタリアンぽい飲み物とかカフェが増えたなあって思いつつ。

聞き役男;
アメリカではブームなんですね。

細田;
そうですね。

聞き役男;
東京でも「夜お茶(よるおちゃ)」とかでカフェに行くとカフェラッテとか置いてある様になって。

細田;
クレバーラブとか?

聞き役男;
ニューヨークから来てるんだ?あれ。

細田;
うん。ニューヨークとかサンフランシスコとか日本よりは早いと思いますね。それで私は、東京でやってみようと思ったんです。


えつこさん;
あー、馬鹿、馬鹿、馬鹿、えつこの馬鹿。パニーニの事全然知らないのに買って来るなんて約束して、どうしよう。


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