香港
客;
えっちゃん!ジントニック。
えつこさん;
ハイ。ジントニックですね。かしこまりました。
ジェイク;
お待たせいたしました。
ミスター;
ああ、ありがとう。ねー、ジェイク、えっちゃん今日はずいぶん張り切ってますね。何か良い事でもあったんですか?
ジェイク;
香港旅行が当たったんだそうですよ。
ミスター;
当たった?何処で?
ジェイク;
デパートで買い物をして、そこでクジを引いたら特賞だったそうですよ。
ミスター;
へー、それはまたクジ運が強いですね。
えつこさん;
あれ? 私の話ですか?
ミスター;
ジェイクから聞きましたよ。おめでとう。
えつこさん;
ありがとうございます。私、前から香港に行きたかったから、すごく嬉しくて。
ミスター;
あ、そうですか。
えつこさん;
でも困った事もあって、旅行ペアでご招待らしいんですけど、友達は皆仕事でしょう?平日に時間か自由になるのは私くらいなんですよ。一人で行ってもいいんですけどそれだとチケットが一人分無駄になっちゃうし、でも誰かと行くにしてもその相手がいないし…。
ミスター;
ふーん。それはゆゆしき大問題ですね。まあ、せっかく香港に行くんだから、香港を知らない相手と行って時間を無駄にするよりは、香港に詳しい相手と行って色々案内してもらったほうが楽しい時間を過ごせるというものですよね。
えつこさん;
そうなんですよ。誰か香港に詳しくて、私と一緒に旅行に行ってくれる人いませんかね?
ミスター;
オホン、オホン、アー、ウン、ウン。
えつこさん;
え?
ミスター;
いや、いや、誰かってほら。ウン。
えつこさん;
え? お詳しいんですか?
ミスター;
お詳しいも何も、伊達にこの年まで遊び倒して暮らして来たって分けじゃない、ってやつですかね。一時はね、私も香港にはまって随分と通ったんですよ。
えつこさん;
えー、そうなんですか!
ミスター;
香港の事だったら大抵の事はお教え出来るってもんですがね。
えつこさん;
あの、私「恋する惑星」が大好きで、それであそこに出てきた所に一度は行きたいと思ってたんですけど、あの辺のこと教えてもらってもいいですか?
ミスター;
恋する…なあに?
えつこさん;
「恋する惑星」
ミスター;
ああ、それね。
ジェイク;
えつこさん、こっちお願いします。
えつこさん;
ハイ! ちょっとすいません。
ミスター;
「恋する惑星」ですか? 察するところ映画のタイトルらしいですがね、一体どんな映画なんですかね。それさえ分かれば、えっちゃんと香港旅行に行けそうなんですがねー。
客;
ビールお願いします。
えつこさん;
かしこまりました。少々お待ち下さい。
みなみさん;
こんにちは。
ジェイク;
いらっしゃいませ。
ミスター;
みなみさん、いいところにいらっしゃいました。
みなみさん;
え?どうしたんですか?
ミスター;
いえ、いえ、ちょっとうかがいますがね。
みなみさん;
ええ。
ミスター;
みなみさん「恋する惑星」ってご存じですか?
みなみさん;
ええ。去年の夏に公開された、ウォン・カーウァイという監督の映画で、香港のマンションを舞台にした恋愛映画なんですよ。
ミスター;
そうなんですか。
みなみさん;
あの、クエンティン・タランティーノも一目見て気に入って、全米の配給をタランティーノ自身がやることになったことでも有名になった映画で、それが、これまでの香港映画とはちょっと違って、日本でいうトレンディードラマみたいなおしゃれな映画だったんですよ。だから若い女の子達にすごい人気だったんです。
ミスター;
そうだったんですか。
みなみさん;
あ、そうだ、確か昨日か一昨日当たりにビデオが発売になったはずですよ。
ミスター;
そうですか。じゃ、今度見てみます。
みなみさん;
是非!
えつこさん;
みなみさんもウォン・カーウァイの「恋する惑星」好きなんですか?
みなみさん;
もちろん。その証拠にねウォン・カーウァイの今撮ってる映画もちゃんとチェックしてるわよ。
えつこさん;
えー。
みなみさん;
次の映画のタイトルは、「フォール・エンジェルス」墜ちた天使達、て言うんですって。
えつこさん;
あー、それ見たいなー。
ミスター;
いやー、まずいですな。このままだと、みなみさんがえつこさんと香港に行きそうな気配じゃないですか。かと言って私がえつこさんに話してあげられる香港の情報と言えば、その昔、香港は香木の貿易港で「香る港」を中国語でチョンゴンと読み、それが今のホンコンという呼び名になった、という話くらいのものですかね。うーん。常連のどなたかえつこさんが喜びそうなピカピカの香港情報を話してませんかねー。
ミスター;
うーん。これは冗談では無く本当に不味いですね。えつこさんとみなみさんは、ますます香港の話で盛り上がってるじゃないですか。
みなみさん;
ねえ、ねえ、香港でお金持ちの男性を見つける方法って知ってる?
えつこさん;
そんなのあるんですか?
みなみさん;
香港ではね、数字の8や3はとても縁起が良いと言われてるの。8は八という字を発と読んで、発達や財産に通じるから。3は三という字を生と読んで、生命に通じるかららしいの。
えつこさん;
へー。
みなみさん;
それでね、香港では車のナンバープレートは入札制にしていて自分の好きな数字を選べるらしいの。するとお金持ちの人は、888とか333とか縁起の良い数字を並びで揃えようとするでしょう。だから、乗ってる車を見れば直ぐにその人がお金持ちかどうか分かるっていうわけ。
えつこさん;
わー、すごーい。
ミスター;
いやー、どうしたら良いんでしょうなあ。えつこさんはみなみさんの話に夢中だし、この辺りで私も何とか盛り返さないと、えつこさんが香港旅行に行く事をみなみさんはまだ知らない様ですからね。今のうちに名誉挽回、起死回生を狙う上でもえつこさんに話せる香港の情報話、ネタ話なんか無いかな。無いかな…。おっ、思い出した。あった、あった、この話をえつこさんにしてあげれば…。
えつこさん;
そうだ、みなみさん。よければ私と香港旅行に行きません?
ミスター;
えっ。うそー。
えつこさん;
みなみさん;
どうしたんですか?
ミスター;
いや、何でも。
えつこさん;
みなみさん、本当に私と一緒に行ってくれます?
みなみさん;
ええ、もちろん。
えつこさん;
ああー良かった。一緒に行って頂くお礼に、私、みなみさんを香港にご招待しますからね。
みなみさん;
え?どういう事?
ミスター;
ペアの旅行券が当たったんだそうですよ。
みなみさん;
あら、すごいじゃない!
えつこさん;
そうなんですよ。
えつこさん;
あのー、よろしかったら、私達と一緒に香港に行っていただけませんか?
ミスター;
私がですか?
えつこさん;
ええ、実はみなみさん、元々取引先のご招待で香港に行く予定だったそうです。
ミスター;
ああ、それじゃあ。
みなみさん;
そうなんですよ。えつこさんの旅行券を一人分無駄にするのも勿体ないでしょう?
えつこさん;
こんな理由でお誘いするのも失礼なんですけど。
ミスター;
うん、うん。まあ、まあね。確かに折角ペアで行けるのに一人で行くのも勿体ない話ですよね。
えつこさん;
あの、ご迷惑で無ければの話なんですけど。
ミスター;
いえ、いえ。私が香港に行くなど思いも寄らなかったので、突然のお誘いに少しばかり戸惑っただけですよ。そうですね、折角のお誘いですから喜んでご一緒させて頂きましょうかね。
えつこさん;
良かった。ありがとうございます。
ミスター;
ははは、良かったですね。
ミスター;
ねー、ジェイク。さっき思い出したんですけどね、香港のお土産で一番安くてしかも香港を感じてもらうのに良い物って何だか知ってます?
ジェイク;
何ですか?
えつこさん;
タイガー・バーム?
みなみさん;
それは日本でも売ってるでしょう?
えつこさん;
あ、そうか。
ミスター;
これが、インスタントラーメンなんですよ
。
ジェイク;
みなみさん;
えつこさん;
ラーメン?
ミスター;
そう。1個30円位ですかね。多少多めに買って来て配ったとしても安いもんだし、しかも食べた人には香港のラーメンの味を味わってもらえるという分けですよ。
ジェイク;
いいですね。
みなみさん;
ああ、おいしそう。
ミスター;
有名なところでは、醤油味の「コウジャイメン」、卵のスープの「ワンジャイメン」、そして豚骨スープ風の「ウーロンメン」というのがありますからね
。
ジェイクにはそれを幾つか買って来ることにしましょうかね。
ジェイク;
お願いします。
ミスター;
それじゃ私は、夜の街に消えるとしますかね。ジェイク、ごちそうさま。
ジェイク;
行ってらっしゃいませ。
えつこさん;
行ってらっしゃいませ。
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