フレキシブルファクトリパートナーアライアンス/5Gに対応したSRF無線プラットフォーム通信規格技術仕様Ver. 2.0を策定

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図1 SRF無線プラットフォームの導入効果

製造現場のDXに貢献する無線通信の安定化技術を拡張

フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)*¹は、SRF無線プラットフォーム*²を第5世代移動通信システム(5G)に対応させるための技術仕様Ver.2.0を策定しました。本技術仕様では、5Gと免許不要周波数帯の無線システムなどを適切に制御することにより、製造現場における様々な用途に対して、より安定した通信や効率的な周波数利用を実現します。さらに、マルチホップ通信機能が追加され、安定した無線通信のカバレッジを容易に拡大することが可能になります。

【背景】

 製造現場では、自動化や省人化、変種変量生産、様々な不確実性への対応などのため、ロボットや自動搬送機などの制御や、IoTにより人や製造設備からリアルタイムに取得したデータをAIで分析することによる検査や作業支援など様々な形でデータを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが増えてきています。また、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大を経て、常に人が現場に張り付くことなく、遠隔監視・遠隔作業が可能となる生産プロセスへの要求も高まっています。こうしたなか、移動する搬送機や人に対する通信手段の提供や、情報化された設備の設置容易性の向上のため、無線通信への期待は高まっており、無線機器の導入が着実に広がっています。また、5Gの登場は大きな注目を集めており、様々な実証実験などが行われ、活用への期待が高まっています。
 一方、製造現場では様々な用途で様々な規格の無線通信が利用され、異なる世代の規格や異なるベンダーによる通信機器が混在しています。この状況では、従来の無線システムの場合、システム間の調整が行われず、通信障害などの問題が発生することがあります。また、レイアウト変更や周囲の構造物の移動による電波の遮蔽や反射の影響、他の無線システムからの干渉などの要因により、安定した通信ができなくなることがあります。さらに、複数の無線システムを利用する場合、互いの干渉による通信品質の劣化など、さまざまなリスクがあります。これらのリスクを低減するためには、通信や電波の状態を製造現場全体で可視化し、適切に無線機器を制御し、統合管理をすることが重要になります。
 FFPAは、こうした課題に取り組み、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の提案によるSRF無線プラットフォームをシステムの基本構成として採用し、複数の無線システムが混在する環境下での安定した通信を実現する通信規格を策定してきました。各ベンダーが開発した無線機器をつなぎ、無線通信の可視化と統合管理を容易に実現するため、SRF無線プラットフォーム通信規格技術仕様Ver.1.1を策定し、2021年10月に一般公開しました。SRF無線プラットフォームにより、干渉を抑制し、安定した通信が実現されます(図1)。

【SRF無線プラットフォーム通信規格技術仕様Ver. 2.0の概要】

 FFPAは、SRF無線プラットフォームの通信規格に関する最新の技術仕様としてVer.2.0の策定を完了しました。本仕様では、一般公開中のSRF無線プラットフォーム規格技術仕様Ver.1.1に対し、5Gへの対応の追加と、マルチホップ通信などを可能とするネットワークトポロジーの拡張を行っています。

5Gへの対応: 技術仕様Ver.2.0では、SRF無線プラットフォームが適切に制御し統合管理を行う対象とする無線システムとして、技術仕様Ver.1.1までに対応してきた免許不要周波数帯の無線システムに加え、新たに5Gを追加しました。技術仕様Ver.2.0を用いることで、5Gと免許不要周波数帯の無線方式の双方に対応した無線機器は、より安定した通信や効率的な周波数利用を実現することができるようになります。例えば、5Gと免許不要周波数帯の無線方式の複数方式をサポートするコンボデバイスを搭載する自律移動ロボット(AMR: Autonomous Mobile Robot)が導入された現場においては、(1) AMRが免許不要周波数帯の無線方式で通信を行いながら移動する際、その周辺に設置された他のデバイスの通信により免許不要周波数帯が混雑している場合には、通信方式を5Gに切り替える、(2) AMRが移動や停止などの制御に関するデータと、AMRに搭載されたカメラからの動画データを、それぞれ無線で送受信する際、周波数帯の混雑状況に応じて制御に関するデータと動画データを免許不要周波数帯の無線方式と5Gを適切に切り替えて送受信する、といった制御が自律的に行われます(図2)。

ネットワークトポロジーの拡張: 技術仕様Ver.2.0ではSRF無線プラットフォームを構成する要素の1つであるSRF Gatewayでネットワークを中継するマルチホップ通信機能を追加しました。このマルチホップ通信では、SRF Gateway間の無線接続や、SRF Deviceを経由したSRF Gateway同士の接続が可能になります。これにより、安定した無線通信のカバレッジを容易に拡大することが可能になります。また、有線ネットワーク上にSRF Gatewayを設けることで、有線/無線混在ネットワークにも対応し、例えば5Gと有線の並列伝送のように、複数回線統合制御の柔軟性を向上させることができます。

 SRF無線プラットフォーム通信規格技術仕様Ver.2.0は、現在、FFPAの会員に対して公開されています。FFPAの入会方法など、詳細についてはFFPA事務局( info@ffp-a.org )にお問合せください。

【ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2022への出展】

 FFPAは、5月25日から27日に東京ビッグサイトで開催されるWTP2022に出展します。西3・4ホール小間番号A03でのFFPAの展示では、SRF無線プラットフォーム、認証プログラム、そして、メンバー企業に関する展示を行います。また、5月26日(木)10時20分から13時20分にセミナー会場Dで開催されるセミナー「Flexible Factory: 製造現場のDXを支える無線活用の最新動向」では「SRF無線プラットフォームの社会展開 〜製造現場の無線通信を安定化しデジタル化を促進〜」と題し、FFPAの最新情報をご紹介します。
 
<用語解説>

*1フレキシブルファクトリパートナーアライアンスについて
フレキシブルファクトリパートナーアライアンスは、複数の無線システムが混在する環境下での安定した通信を実現する協調制御技術の規格策定と標準化、および普及の促進を通じ、製造現場のIoT化を推進するために2017年7月に設立された非営利の任意団体。
メンバー企業は、2022年4月末現在、オムロン株式会社、株式会社国際電気通信基礎技術研究所、国立研究開発法人情報通信研究機構、日本電気株式会社、富士通株式会社、サンリツオートメイション株式会社、村田機械株式会社、シーメンス株式会社、一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター。会長は、アンドレアス・デンゲル(ドイツ人工知能研究センター)。
https://www.ffp-a.org/jp-index.html

*2 SRF無線プラットフォーム
多種多様な無線機器や設備を繋ぎ、安定に動作させるためのシステム構成。SRF(Smart Resource Flow)は、マルチレイヤシステム分析を用い、製造に関わる資源(人、設備、機器、材料、エネルギー、通信など)がスムーズに流れるよう管理するシステム工学戦略。SRF無線プラットフォームの技術仕様は、FFPAによって策定されている。

 

図1 SRF無線プラットフォームの導入効果図1 SRF無線プラットフォームの導入効果

図2 5Gに対応したSRF無線プラットフォームの活用例図2 5Gに対応したSRF無線プラットフォームの活用例

 

 

 

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