パシフィックボイス/SSFF & ASIA 2023 秋の国際短編映画祭 日本博:特別製作ショートフィルム3作品を上映『海の見える街で』の宮城 夏鈴監督、佐久本 宝さんが登壇

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ショートフィルムで堪能する日本各地の文化と物語をトーク

 米国アカデミー賞公認、日本発・アジア最大級のショートショート フィルムフェスティバル & アジア(略称:SSFF & ASIA)2023」 秋の国際短編映画祭では、2023年10月22日(日)に「日本博:特別製作ショートフィルム上映&トークイベント」が開催されました。

 本イベントでは、「日本人と自然」を総合テーマに、文化庁、日本芸術文化振興会が中心となって、関係省庁、地方公共団体、民間団体等と連携しつつ、 「日本の美」を国内外へ発信し、次世代に伝えることで更なる未来の創造を目指す大型国家プロジェクト、「日本博」の事業の一つとして、3年間にわたりSSFF & ASIAが展開している、日本各地に眠る文化や物語のエッセンスを抽出し短編小説に昇華するプロジェクトから生まれたショートフィルム3作品を上映し、最新作『海の見える街で』の宮城 夏鈴監督と、キャストの佐久本 宝さんが登壇し、制作背景や撮影時のエピソードを語りました。

 上映されたのは福島県の昔話「姥皮(おっぱのかわ)」をモチーフにした短編小説(作:大前 粟生)から『おばあさんの皮』(監督:井上 博貴)、沖縄県の組踊「銘苅子(めかるし)」をモチーフにした短編小説(作:高橋 久美子)から『おかあの羽衣』(監督:平 一紘)、静岡県伊豆半島に銅像があることでも知られる小説「金色夜叉」をモチーフにした短編小説(作:乘金 顕斗)から『海の見える街で』(監督:宮城 夏鈴)の3作品。

  上映後に登壇した『海の見える街で』の宮城 夏鈴監督は、SSFF & ASIA 2022で初の監督作品『肝愛さ』がライブアクション部門(ジャパンカテゴリー)にノミネート。自身が監督するショートフィルム3本目となる、『海の見える街で』は、今回の秋の国際短編映画祭で初めてスクリーンで見たとし、感動を述べました。

 キャストの佐久本 宝さんは、映画『怒り』で第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞された注目の俳優。

「監督と久々に会い、お客さんと一緒に作品が見れたことがすごく嬉しい」と話し、トークイベントがスタートしました。

女性が描く男の子はかわいい!?

 高校最後のインターハイに向け、剣道の練習に励む幼馴染の日向(ひなた)と颯人(はやと)の友情が、それぞれの成長と共に変化していく様を描く本作。原作では女子2人が対立する展開だったものの、ショートフィルムでは男子2人の対立に置き換えた点についてMCが聞くと、宮城監督は「男子はどんなことで喧嘩するのだろう、というリサーチから始め、話を聞いていくうちに、外見など、自分が負け犬だと感じたことが原因で対立意識が始まることがわかった。男子のルッキズムに観点を置いて制作してみようと思った」と説明しました。

 佐久本さんは脚本を読んで、「学生の時に友達と喧嘩したことがあまりなかったので、ここまで人に対して言えるのも、信頼しているからこそなのかな」と自身の学生時代と重ね合わせつつ、また、「女性が描く男性はどこかかわいかったし、一般的な監督のイメージと違い、宮城監督自身が撮影現場でもうきうきと楽しんで撮影していたので、自然と僕たちもかわいくなりました」と会場の笑いを誘いました。

 

美しい海に優しい地域の人々― 幸せな撮影現場 

 ロケ地となった静岡県伊東市についてMCが聞くと、宮城監督は「3回ほど訪問し、地域の方との交わりが作れる場所を選んだ」「ロケハン中には宿泊場に外国人も多く訪れていて、ローカルな日本の地域を楽しんでくれている様子が嬉しかった」と話しました。

 佐久本さんも、「伊東は初めてだったけれど、自然とともに人がすごく良かった。」「撮影地となった干物屋のお母さんと子どもたちがすごく優しく、ご飯を出してくれたり、干物のさばき方を教えてくれたりなどして感動した。自分でも初めての地域の人と交流する機会なかなかないのですごく幸せだった。」と振り返りました。

萩原聖人さんのプロフェッショナルに感心

 続いて、佐久本さんは「皆リラックスした状態で撮影していて、萩原聖人さんも、ふとのぞいたお店の中で地元の人かと思ったくらいなじんでいた。」「水沢(林太郎)君と海で遊ぶシーンも、水は冷たかったけど心から楽しんで撮影した」といったエピソードも紹介。一方で宮城監督は、台本を見ながら真面目な顔をしている萩原聖人さんに話しかけると、「この気持ちの裏はどういうことなんだろう、なんでこの動作をすべきなんだろう」などと細部にわたる質問があり、「萩原聖人さんのプロフェッショナルな向き合いを目の当たりにし、すごくたくさんのことを学び、監督として、作中の日向と颯人のように成長できた」と語りました。

日本の魅力、映画を通じて海外に発信したい

 トーク終盤では、日本博のプロジェクトについて改めて紹介があり、宮城監督は、ショートフィルム2作目が「鶴の恩返し」をもとに西表島を舞台に描いた作品だったことを紹介しながら、「昔話や地域に根差した作品作りは面白い」とし、現在は米国ロサンゼルスに在住のため、「アリゾナ州に行ったときには、ネイティブアメリカンの物語を作品にできたら良いな、と思ったし、日本を離れてみて改めて感じる日本の魅力をクリエイティブに落とし込んでいけたら」と意気込みを見せました。佐久本さんも、今回上映した3つのショートフィルムを見て、「自然、文化、言葉、音楽など映画作品に現れる要素を感じてもらえたら」 と話しトークイベントが終了しました。

◆日本博:特別製作ショートフィルム3作品はメイキング映像とともに下記公式サイトで配信中

『おばあさんの皮』  https://www.shortshorts.org/japanculturalexpo/2021/the-old-woman-skin/

『おかあの羽衣』  https://www.shortshorts.org/japanculturalexpo/moms-celestial-robe-of-feathers/

『海の見える街で』  https://www.shortshorts.org/japanculturalexpo/creation-of-stories-all-around-japan/

◆イベント概要:

日時:2023年10月22日(日)14:40-16:20

会場:東京都写真美術館ホール

内容:日本博特別製作ショートフィルム3作品の上映および『海の見える街で』より宮城 夏鈴監督、佐久本 宝さん登壇によるトークイベント

日本博:特別製作ショートフィルム3作品

『おばあさんの皮』 監督・脚本:井上 博貴

キャスト:加藤 小夏、浜野 謙太、金澤 美穂、片桐 はいり、高橋 惠子

原作:「おばあさんの皮」大前 粟生

19:55/日本/ドラマ

「美人とかいわれるのが嫌だった」。故郷の福島県三島町から上京する前に、

立ち寄った土湯温泉で「おばあさんの皮」を手渡された京子。皮を被って

おばあさんに変身し、気になる男性の心のうちを探ろうとするが……。

『おかあの羽衣』 監督・脚本・編集:平一紘

キャスト:服部 樹咲、川島 鈴遥、池田 航、ゴリ(ガレッジセール)、尾野 真千子

原作:「おかあの羽衣」高橋 久美子

21:29/日本/ドラマ

「私、きらいなものが多い」

那覇までの渋滞、借金だらけの父、親友の彼氏、牛乳、そして地元の塩屋湾。美しい母は、なぜ父と結婚したんだろう。漠然とした将来への不安から逃げるように瑠璃は考えていた。そしてある日、母の過去を知るのだが‥。

『海の見える街で』 監督・脚本・編集::宮城夏鈴

キャスト:水沢 林太郎、佐久本 宝、田中 瑛央、塩田 宙、きゃんひとみ、

酒向 芳、萩原 聖人

原作:「海の見える街で私たち」乘金 顕斗

24:52/日本/ドラマ

高校最後のインターハイに向け、剣道の練習に励んでいた幼馴染の日向と颯人。

ある日、日向が芸能事務所にスカウトされたことがきっかけで二人の関係に亀裂が生じ始め…。

傷つき、悩みながら大人へと成長していく二人の少年の姿を描く。

監督情報

井上 博貴 (いのうえ ひろき)

2009年に映画『パニック4ROOMS』で監督デビュー。

2017年オムニバスホラー映画『狂い華』内の1篇、堀田真由主演『呪いうつり』の監督・脚本を担当。

ショートフィルム『痣』は、「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2018」ジャパン部門、ベストアクトレス受賞ほか、国内外で高い評価を得た。

その他、CINEMA FIGHTERS PROJECT第3弾オムニバス映画『その瞬間、僕は泣きたくなった』内の1篇の『魔女に焦がれて』、劇場公開映画「新卒ポモドーロ」や「鍵」等の脚本&監督を担当。

第52回ロッテルダム国際映画祭にて監督作の実写VR映画「なぎさにて」が公式上映作品され、本年10月に新作映画「消えない灯り」の劇場公開を控える。

平 一紘 (たいら かずひろ)

2014年に映画『アンボイナじゃ殺せない』で監督デビュー。

第15回TAMA NEW WAVE ある視点社会派サスペンスNEWWAVE受賞

2015年に監督、脚本を務めた、映画『遣らずの街、コザの雨』沖縄国際映画祭にて上映。

また、2016年に監督を務めた、映画『釘打ちのバラッド』で第3回新人監督映画祭特別賞受賞。2020年にQAB特別ドラマ「パナウル王国物語」にて日本民間放送連盟賞ドラマ部門準グランプリを獲得。2022年、自身が監督、脚本を務める映画『ミラクルシティコザ』が全国劇場公開。

『闘牛戦士ワイドー』『琉球トラウマナイト』など、沖縄県内のTV番組をはじめ、

県内外の企業プロモーションも行っている。

宮城 夏鈴(みやぎ かりん)

1992年生まれ。沖縄県出身。

2017年ベトナム国営放送×琉球朝日放送合作ドラマ『遠く離れた同じ空の下で』でヒロインを演じ、俳優デビュー。2021年に、地元沖縄を題材にした短編映画『肝愛さ』で初監督/脚本/主演で制作し、SSFF &ASIA ジャパン部門ノミネート作品に選出。続けて制作した、西表島を舞台にした『バーミィトーリ』では監督、主演を務めた。

今回の作品は自身3作目にあたる。

現在はLAと東京の2拠点で、枠を超えた活動を続けている。

SSFF & ASIA 2023 秋の国際短編映画祭 概要

◆期日および会場:

  <オンライン会場>

   オンライン グランド シアター 2023年9月28日(木)~10月27日(金)

   オンラインサテライト会場:①「DOOR」 シアター  期間同上

                 ②ブリリア ショートショートシアター オンライン 

                    10月4日(水)~4週に渡りハロウィン特集

     

   <リアル会場> 

        赤坂インターシティ コンファレンス 10月17日(火)

        東京都写真美術館ホール 2023年10月19日(木)~22日(日)

             

       サテライト会場 : ①東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場

              (HIBIYA CINEMA FESTIVAL 2023内上映)

                              2023年10月13日(金)~22日(日)

              ②シアターギルド代官山 2023年10月16日(月)~18日(水)                

※プログラムにより上映開始時間が異なります。ウェブサイトにてご確認ください。

◆内容:SSFF & ASIA 2023受賞作品の上映・配信のほか、韓国ショートフィルム特集上映、

     ゲストを迎えてのトークイベントやクリエイター向けのオンラインセミナー、

      BRANDED SHORTSのセミナー開催も予定。

      オンラインサテライト会場ではハロウィンをテーマにしたショートフィルムプログラムを配信。

      ※イベント・ゲスト情報は9月28日のオフィシャルサイトにて公開

 

◆料金:【無料】

       ・東京都写真美術館ホール 

 ・東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場(HIBIYA CINEMA FESTIVAL 2023内上映)

      ・ブリリアショートショートシアターオンライン

      ・クリエイター向けオンラインセミナー 

      【有料】

      シアターギルド代官山

      オンライングランドシアター  

        ※オンライン会場の作品が30作品以上見放題となる鑑賞パスポート 1,000円(税込)申し込み:東京都写真美術館での上映の席予約は9月28日(木)14:00~ ウェブサイトにて受付開始

              ※サテライト会場の予約、チケット購入はウェブサイトに掲載の各リンク先より

ウェブサイト:https://shortshorts.org/2023autumn/

主催:ショートショートアジア実行委員会 共催:東京都 後援:J-WAVE 東京国際映画祭提携企画

【ショートショート フィルムフェスティバル & アジア】 

米国俳優協会(SAG)の会員でもある俳優 別所哲也が、米国で出会った「ショートフィルム」を、新しい映像ジャンルとして日本に紹介したいとの想いから1999年にアメリカン・ショート・ショートフィルムフェスティバル創立。2001年には名称を「ショートショート フィルムフェスティバル(SSFF)」とし、2004年に米国アカデミー賞公認映画祭に認定されました。

また同年、アジア発の新しい映像文化の発信・新進若手映像作家の育成を目的とし、同年に 「ショートショート フィルムフェスティバル アジア(SSFF ASIA 共催:東京都)」が誕生し、現在は 「SSFF & ASIA」を総称として映画祭を開催しています。

2018年には、映画祭が20周年を迎えたことを記念し、グランプリ作品はジョージ・ルーカス監督の名を冠した「ジョージ・ルーカス アワード」となりました。 2019年1月には、20周年の記念イベントとして「ショートショートフィルムフェスティバル in ハリウッド」が行われ、2019年の映画祭より、ライブアクション部門(インターナショナル、アジアインターナショナル、ジャパン)およびノンフィクション部門の各優秀賞4作品が、2022年からはアニメーション部門の優秀賞を含む5作品が、翌年のアカデミー賞短編部門へのノミネート候補とされる権利を獲得しました。SSFF & ASIAは映画祭を通じて引き続き、若きクリエイターを応援してまいります。

     https://www.shortshorts.org

 

 

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