世界初Wi-Fi 8ルーター「ASUS ROG NeoCore」徹底分析──遅延1/6・中距離2倍を実測した衝撃スペックを本音で語る

まずは結論:ROG NeoCoreは「速さ」より「賢さ」を極めたWi-Fi 8コンセプト

ASUSがCES 2026で披露した「ROG NeoCore」は、“Wi-Fi 8=IEEE 802.11bn”ドラフト仕様を前提に設計された世界初のコンセプトルーターだ。従来の世代がピーク速度競争を繰り広げてきたのに対し、Wi-Fi 8はレイテンシー低減と安定性向上を最優先に据える。ASUSは実環境テストで「中距離スループット2倍・IoTカバレッジ2倍・P99レイテンシー1/6」(*)を示し、クラウドゲームやAIデバイスの同時接続で真価を発揮するとアピールした。ピーク速度の“数字遊び”より、実利用の体感を底上げする方向に大きく舵を切った点が最大のトピックだ。ASUS公式プレスリリース 参照。

Wi-Fi 8(802.11bn)ドラフト仕様のポイントを整理

ドラフト段階ながら、Wi-Fi 8では以下の技術が柱になる。①マルチAP/マルチクライアント協調:複数ルーターと端末がダイナミックに帯域を融通し合い、輻輳時でも最適経路をキープ。②スマート周波数コーディネーション:高密度住宅で隣家の電波と干渉しにくいよう自律調整。③双方向リンク強化:スマートライトなど低電力IoTでも切れにくいリンクを保ち、バッテリー消費を抑える。④スペクトラム効率の最大化:帯域当たりの実効スループットを高めるスケジューリングが標準化され、同一チャンネル内でより多くのフローをさばく。ASUSが示す“2倍の中距離スループット”は、この④に最も起因する。

スペック表(公開情報ベース)

  • 規格対応:Wi-Fi 8(802.11bn)ドラフト、下位互換あり
  • 動作バンド:2.4 GHz/5 GHz/6 GHz(ドラフトの標準チャネル幅320 MHzまで対応予定)
  • アンテナ:外部アンテナレスの正二十面体(D20)筐体内部配置
  • 有線:2.5 GbE WAN ×1、2.5 GbE LAN ×4(※テスト機仕様。製品版は未定)
  • メッシュ:ASUS AiMesh / AI Network Engine対応
  • ピーク速度:Wi-Fi 7同等(ドラフト段階で変更なし)
  • 実効性能:中距離スループット最大2倍、P99レイテンシー1/6(社内測定)
  • 発売時期・価格:いずれも未定(2026年内投入を目標)

*有線ポート構成はメディア向けデモ機で確認された情報。製品化時に変更される可能性がある。

筐体デザイン:D20形状がもたらすメリット

外観はテーブルトップRPGのダイスを思わせる正二十面体。尖った頂点が指向性アンテナの“擬似エレメント”として機能し、外付けアンテナを排したミニマルなフォルムを実現する。ユーザーは「ゲーミング=角ばった8本アンテナ」という従来イメージから解放され、設置場所の自由度が大幅に向上する。さらに内部アンテナ配置により、耐久性・埃対策・発熱拡散の各面で優位が見込める点も見逃せない。

実環境ベンチマーク:速度より遅延が主役

ASUSによるスループットテストは、同一間取りにWi-Fi 7ルーターとNeoCoreのテスト機を設置し、各部屋で速度とラウンドトリップ遅延を比較するもの。結果は平均スループット+10〜30%P99遅延83→13 ms(約1/6)と報告された。ピーク速度が“据え置き”でも、eスポーツやクラウドPC用途で重要な「最悪値の底上げ」が顕著に効く。Mr.Gadget記事

AI Network EngineとAiMeshの相乗効果

NeoCoreは既存モデルと同様にAiMeshをサポートする見込みだが、Wi-Fi 8世代では「AI Network Engine」がさらに高度化。自宅に複数APを敷いた際、端末の利用パターンを学習し、干渉を避けつつ最短ルートを選択する。これにより、スマートホーム子機が多い環境でもメッシュ全体の帯域効率を最大化できる。

ゲーミング視点での実用度を斬る

  1. 遅延重視タイトル(FPS/格闘)は、平均pingより“変動幅”が勝敗を左右する。P99レイテンシーが1/6に縮む点は極めて大きい。
  2. クラウドゲームはビットレートと遅延の両立が不可欠。中距離2倍スループットと低ジッターの組み合わせは理想的。
  3. 一方、ローカルNASへの大容量転送の絶対ピーク値はWi-Fi 7と同等。10GbE有線が必須な重クリエイターは要注意。

競合Wi-Fi 7フラッグシップとの比較

現行のROG Rapture GT-BE98(Wi-Fi 7)は理論46 Gbps級・外部アンテナ8本を誇るが、実際のマンション環境では50 ms超のレイテンシースパイクを抑え切れないケースがある。NeoCoreはピーク値を追わずP99遅延を削ぎ落とす戦略で、ゲーミング体感・IoT安定性に振った設計思想が際立つ。

発売時期・価格の見通しと注意点

Wi-Fi 8は標準の最終策定が最短でも2028年と言われている。ASUSは「2026年内に初期ロットを投入」と明言したが、ドラフト準拠のため後日ファーム更新が必要になる可能性が高い。購入時は“クライアント側のWi-Fi 8化”が追いつくかどうかも合わせて考慮したい。

編集部の本音まとめ

ROG NeoCoreは「速度の天井」ではなく「ボトムライン」を劇的に底上げする──これがWi-Fi 8世代の核心だ。eスポーツ、クラウドゲーム、多数のAI/Iot端末を同時に動かす未来を想定するなら投資する価値は大きい。一方で“最大リンク速度”の数字遊びを期待すると肩透かしを食う点は要注意。正式発売までに続報を待ちつつ、自宅ネット環境のボトルネックが「ピーク速度」か「遅延のバラツキ」か、今一度棚卸ししておくと後悔しない買い替えができるだろう。

(*) ASUS社内テスト結果。テスト条件の詳細は非公開。

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