
商品券が届かない!? 物価高対策で見えた高齢者デジタル回避問題とスマホ利用率のリアル
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物価高とデジタル格差が交差する「商品券が届かない」問題
食料品や公共料金の値上がりが続くなか、政府・自治体は低所得世帯や高齢者を対象に1万円相当の商品券を配布して生活を下支えしています。ところが「申請サイトに入れない」「スマホを持っていない」などの理由で、本来の支援が行き渡らないケースが各地で報告されています。東京都が実施する「物価高騰対策臨時くらし応援事業」でも、スマートフォンか郵送はがきでの申請が必須とされ、高齢の単身世帯から「操作が難しい」との声が相次ぎました。物価高対策そのものは歓迎されながらも、デジタル手続きの壁が新たな格差を生みつつあります。
全国で進む電子商品券化と高齢者の取り残され
紙の商品券は印刷や配送に時間と費用がかかるため、自治体はQRコード決済や専用アプリを活用したデジタル商品券へ移行しています。福井県勝山市はPayPay残高への付与、愛知県日進市はLINE連携型の電子券を導入し、スピードと事務コスト削減を実現しました(FNNプライムオンライン調査)。しかし広島市のFAQには「スマートフォンをお持ちでない方は電子商品券の申込ができません」と明記されており公式サイト、高齢者ほど申請ハードルが高い実態が浮き彫りになります。
- 紙券より早く配れるが、機器やアプリに不慣れな人が排除されやすい
- 家族による代理申請が前提になり、独居高齢者は孤立しやすい
- スマホ購入や操作教室の追加コストが自治体・住民双方に発生
最新統計にみる高齢者のスマホ保有・利用率
総務省が2025年5月に公表した「令和6年 通信利用動向調査」によると、個人全体のスマートフォン保有率は80.5%まで伸びました。しかし60代後半では68.4%、70代では49.6%と過半数を下回り、年齢が上がるほど保有率が低下します。専用アプリのみで申請を受け付ける方式は、数字上でも約半数の70代を事前に排除している計算になります。ICTリテラシー格差は「持っているか」に加え、「使いこなせるか」という二重の壁となっており、自治体窓口にはタップ操作やSMS認証でつまずく相談が殺到しています。
申請までの三大ハードル
- 機器環境-NFC対応スマホや最新OSが必要な場合が多く、従来型携帯電話では不対応。
- 本人確認-マイナンバーカード読取やSMSコード入力が必須。カード保有率は80代で44%に留まる(デジタル庁資料)。
- 情報取得-申請開始をウェブとSNSで周知する自治体が増え、そもそも情報に触れられない高齢者が出る。
このうちどれか一つでも欠けると申請が完結しません。「はがきを出したはずが届いていない」「SMSが読めずタイムアウトした」など、手続き途中で離脱するケースも多数報告されています。
自治体の支援策――窓口と紙を残す重要性
敦賀市は受け取りが済んでいない65歳以上の市民に対し、窓口での再交付を行うと周知しました(市公式)。日野市はスマホ購入費を最大3万円補助し、店頭講習を条件に操作支援も実施しています(市公式)。こうした施策は「デジタル化の推進」と「紙や対面の安心感」のバランスを取る試みですが、人的リソースと予算が限られる自治体では継続性が課題です。
- 対面サポートで申請完了率が向上(印西市・再配達相談で約15%改善)
- スマホ購入補助は初期コストを下げるが、操作習熟には別途講師費用が必要
- 紙ハガキ併用はコスト増でも「取り残さない」視点で支持が高い
専門家が指摘する改善策
高齢者ICT支援に詳しいNICT研究員は「単なるデジタル化ではなくハイブリッド手続きの設計が不可欠」と強調します。具体策としては、
- オンライン申請と同時に自治体窓口・郵送での受付を明示
- 介護事業所や地域包括支援センターを活用した申請代行
- 操作体験会を商品券利用店で同時開催し、利用までの導線をつなぐ
実証自治体の分析では、「相談できる人・場所」の存在が申請完結を大きく左右するとの結果も得られています。デジタルツールの提供だけでなく、相談体制をセットにすることで初めて支援が届く――これが現場の共通認識になりつつあります。
編集部まとめ
物価高対策の商品券は、本来苦境にある高齢者を守るための制度です。しかしデジタル化が加速するほど、高齢者の側には「スマホがない」「情報が届かない」という新たな壁が立ちはだかります。最新統計でも70代以上のスマホ保有率は半数未満にとどまり、デジタル手続き一本化は支援対象の切り捨てにつながりかねません。
編集部は「紙とデジタルの二刀流」を制度設計の前提に据えるべきだと考えます。配布スピードや事務効率を求めるならデジタル券は有効ですが、対面窓口や郵送申請を残すことで、最も支援を必要とする層に確実に届く仕組みが整います。自治体ごとの好事例を横展開し、申請支援の人的ネットワークを地域で共有することが、真の物価高対策になるのではないでしょうか。
