養殖記
 

1998年度


池整備の始まり

 今年は新年早々から老朽化した事務所や出荷場、鉄骨ハウスの解体を行ったので、2月は出荷場のアレンジで大工仕事に明け暮れていました。まだ、完成とはいきませんが、とりあえずひと段落つき、3月10日から、いよいよ池の整備に取りかかりました。まずは、例によって池中央に溜まったヘドロの除去から始まります。今年は毎週のように雨が降り、ヘドロが乾き切らずに湿っているので重くて大変です。
 世の中の不景気風はやむこともなく、活クルマエビの市況にも大きな影響がでており、はたしてこれがいつまで続くのかという先行きの不透明感があって、「いっちょう今年もやったるぞ!」という気分になかなかなれないのが現状です。しかし、ああだ、こうだと考えていても、時はどんどん過ぎていくので、やることだけはぴっちりやっていこうと、スコップを握りしめています。
 これから2ケ月は土方作業でいい汗流して、気分を一心して、気持ちよく今年の稚エビの池入れを向かえたいものです。(1998.03.12)


池入れ1998

 3月、4月と池整備と出荷場作りで、なんだかんだ、と過ごしていました。4月は夏日を記録するなど、ずいぶん暑かったのですが、5月は昨年と同じように、肌寒い日が続いたり、暑くなったり、日照も平年の3割ほどしかないそうで、不順な天候が続いています。天気がどんよりしているためか、気分も湿りがちで、イマイチ、気合いの入らない状態でした。しかし、5月11日に、稚エビの供給をお願いしている宮崎県の松本さんから、「月末に予定していたのを、早めにしたい。」との電話があり、18日に池入れすることに決まり、急遽、池に海水を入れ始め、バタバタと水車のセットなどを間に合わせました。幸い、15日まで雨が無く、塩分26パーミル前後の海水を池に入れることができました。
 16日に雨があり、17日は曇り、池入れ当日の18日は、朝から雨が降ったりやんだり。私は、いつものようにレンタカーを借り、名古屋の小牧空港で荷物を受け取り、養殖場へとむかいました。名古屋ではすでに雨はあがっていたのですが、帰り道で静岡県に入り、東名高速の三ヶ日をすぎたころからまた断続的に強い雨が降りだし、養殖場に到着してからも強い雨が降ったりやんだりで、作業はやりずらく、前途多難を感じさせました。
 今年の稚エビは、例年だと10mm前後のものが、すでに15-20mmとかなり大きく、池入れ作業は箱数が多くなって大変ではありました。写真のように、今年もきれいな良い状態で届きましたが、翌日の潜水観察では、稚エビが大きい分、死んで白くなったものが目立つので、「快調!」とはいきませんでした。それでも、1割りも減ってはいないと思われ、もともと、注文の2割り増しほどで送られてくるので、池入れ尾数としては問題ないでしょう。
 塩分は16日と18日の雨で、20パーミルまで下がっていますが、19日は晴れて、水温も24.5℃まで上がってきました。大雨の前に池に海水を溜めることができたことと、稚エビを池に入れるとともに水温が上がって来てくれたということは、前途多難の中にも幸運のきざしも見えてきたのかもしれません。
 何はともあれ、今年もまた「無事、生産できますように」と祈らずにはいられません。(1998.05.19) 


出だしの1ケ月

 稚エビの池入れから1ケ月が過ぎました。18日の稚エビの体重測定では、平均1.4g とまずまずの成長です。
 5月は、池入れ後は暑い日々が続き、水温も25℃前後で、稚エビの成長にはまずまずの条件でしたが、6月になり、梅雨に入ってからは、曇りや雨の日が多く、水温は20-25℃と例年並の水温が続き、成長スピードも例年並といったところです。しかし、池入れの日が例年より10日早く、また稚エビの大きさも大きかったので、平均体重は例年よりもひとまわり大きい感じです。生残、成長とも、順調でしたが、これから水温が高くなる夏を越えるのが一苦労となります。
 また、今年は、冬の間の休眠期間の遅れを少しでもとりもどそうと、浜名湖の天然のクルマエビの蓄養を始めました。まだ、試験的で量的には少ないのですが、今年の浜名湖の天然のエビは比較的少なく、地元相場は意外に高いので、なかなか池がうまらないのが現状です。越冬は露地池では水温が0℃ちかくなって、リスクが大きいので、蓄養をやってみようという事になったのですが、はたして、採算ベースにのるのかはやってみなければわからないというところです。
 東京、築地市場の活クルマエビの相場は、冬の間よりは良くなってきたようにも感じられ、私もいよいよ本格的なシーズン到来で、気合いは十分に入ってきました。(1998.06.19)


未知との遭遇(降り続く大雨に泣く)

 今年は、6月下旬に水温が30℃を越えて、早い夏がやってきて、さあ大変だと、セッセ、セッセと間引きに精をだし、なんとか夏は無事に越すことができました。夏の間は市場へ出荷したエビも、他産地のものよりも着荷時の活(いき)がよいこともあって良い値で競っていただき「絶好調」でありました。9月も中旬になり、水温も下がってきて、「いよいよエビの成長もあと一ケ月、ハリキッテいこう!」と気合いを入れたとたんの9月16日に台風5号がやってきて雨を降らせていきました。そして、9月21日から台風8号が、22日には7号が相次いで接近して、大雨を降らせ、その後も前線が居座って雨は降り続いていました。
 この地へ来て2年目の1993年7月の大雨で雨水が側溝から流れ込み、一池だけですが12‰まで塩分が下がったことがありました。そのときは、餌の喰いが悪くはなりましたが、エビが死んでしまうことはなかったので、その後は普段の池の管理ではあまり塩分については気にかけずに過ごしてきました。
 今年は稚エビの池入れ以来雨が多く、取水している浜名湖の塩分が低くなっていたようで、養殖池の塩分も例年より低い状態が続いていたようです。池入れ直後に屈折塩分計を池の中に落としてしまったため、それ以後一度も塩分をチェックしないままでいたので、降り続く大雨で塩分が10-12‰まで下がっているのに気が付かないままでいました。
 9月は出荷に追われてもいたので、ついつい「気」は取り上げ、出荷の方にいってしまい、水温も下がってきたという油断もあって19日ぐらいからチラホラへい死がでていても気にとめずにいたのがあとの祭りとなり、降り続く雨で塩分は8-10‰(1/4〜1/3海水)まで下がり、こちらの池、あちらの池とバタバタとエビが死に始めました。浜名湖の水も10‰以下で取水もできず、大雨の中で池に入り、ひたすら死エビを拾って除去する作業が続き、推定では3トンほどの在庫のうち1トンはへい死したようです。全滅したわけではないのが不幸中の幸いではありました。
 しかし、それまでが快調であっただけにガックリ度はかなり大きく、自然の力の前の無力感を今年も味わう事になりました。とはいえ、ガックリばかりしていては喰っていけませんから、今年もまた違うパターンでの状況でどうのように養殖場として生きていくかの方策を試行錯誤することになります。苦境を乗り越えることで自身の成長もあるんだと信じて頑張っていこう!(1998.11.06)


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